百日咳が流行中です|久が原ファミリークリニック|小児科・内科 |大田区久が原・池上
百日咳が流行中です
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コロナ禍以降、百日咳の感染者数が徐々に増加しており、2025年に入り急増しています。百日咳は、長期間咳が続く細菌感染症です。症状、治療、予防と対策などについてお伝えします。
百日咳は、「百日咳菌」という細菌を吸い込むことによって発症する
特有のけいれん性の激しい咳発作(痙咳発作 )を特徴とする急性の気道感染症です。
百日咳は世界的に見られる疾患で、いずれの年齢でもかかりますが、小児が中心となっています。母親からの免疫が十分でなく、乳児期早期から罹患する可能性があり、乳児(特に新生児や乳児期早期)では重症になり、肺炎、脳症を合併し、まれに死に至ることもあります。
国内では年間約1万人が感染していましたが、コロナ禍では感染対策のためかインフルエンザなど他の感染症と同様、患者数が激減し、百日咳の患者数は1000人を下回っていました。コロナ対策が緩和され、2024年から百日咳の年間患者数は徐々に増えています。
2025年に入り、2024年を上回るペースで患者数が増えており、2018年以来6年ぶりに流行が見られます。
咳やくしゃみなどによる飛沫感染が主で、それらを触れた手で目や鼻・口などを触ることでなってしまう接触感染でもうつります。感染性は極めて高く、予防接種を受けていない場合、8割以上の確率で感染します。母親からの免疫は移行しないため新生児に免疫がなく、ワクチン接種を定期的に行うことが重要です。
大人における百日咳は「咳が強めの風邪」という位置づけのことが多いですが、乳幼児では特有の咳が長く続き、体力が消耗していきます。初期は通常の風邪と見分けがつきにくいため、受診が遅れがちです。
経過は3期に分けられ、全経過で約2~3カ月で回復するとされています。百日咳菌に感染してから5~10日間の潜伏期は、無症状です。
咳が出始めてから約3週間は感染性が持続します。早期に治療することでこれを短縮することができますが、この時期に風邪と区別して診断をつけるのはなかなか難しいことです。「咳が強めの風邪」と判断されることが多いため、百日咳の検査は実際にはあまり行われていません。痙咳期に入って抗菌薬を使用しても、症状は軽快しにくいとされており、咳止めなどの対症療法で様子を見ることになります。
百日咳に有効なワクチンは、定期接種の5種混合ワクチンに含まれています(ポリオ、百日咳、破傷風、ヒトインフルエンザ菌感染症 [Hib感染症] 、ジフテリア)。現行の定期接種は生後2か月から開始され、0歳代に3回、1歳~1歳半で1回の計4回接種です。接種できる時期になったら早めに接種しましょう。
ワクチンの予防効果は時間とともに低下してしまいます。小学校就学前頃に百日咳菌に対する免疫が低下してしまうため、現状の百日咳感染者は5~15歳の子どもに多くなっています。日本小児科学会は、小学校入学前と11~12歳時に追加接種を推奨していますが、任意接種のためほとんど接種されていないのが現状です。
小さなお子さんがいる親御さん、お世話をすることがある祖父母や親戚の方々がワクチンを接種し感染を予防することも、重症化リスクの高い乳児への感染を防ぐためには重要と言えるでしょう。ぜひワクチン接種をご検討下さい。(大人の方のワクチンは三種混合ワクチンを接種します)
ワクチン追加接種に加えて、新型コロナやインフルエンザと同じように、呼吸器症状があるときのマスク着用や、こまめな手洗いなどの手指衛生はもちろん有効です。