溶連菌感染症|久が原ファミリークリニック|小児科・内科 |大田区久が原・池上
溶連菌感染症
Streptococcal infection
Streptococcal infection
A群レンサ球菌(Streptococcus pyogenes)という細菌が原因の感染症です。最も頻度が高いのは、のどの痛みや発熱などの症状がでる咽頭炎・扁桃炎です。体や手足に小さく紅い発疹を伴う場合があります。それ以外には、皮膚の感染症(とびひや蜂窩織炎、丹毒など)、扁桃周囲膿瘍や咽後膿瘍などの首の深いところの感染症など、さまざまな感染症を引き起こします。また、咽頭炎などの後に稀に起こる糸球体腎炎やリウマチ熱といった合併症にも注意が必要です。
溶連菌感染症の中には、非常にまれな病気ですが、劇症型溶連菌感染症というものがあります。症状は発熱、手足の痛みから始まり、菌が全身に広がります。発症から多臓器不全に至るまでの経過が急激ですので注意が必要です。
今回は頻度の高い咽頭炎・扁桃炎について主に記載します。
学童期のお子さんに多い病気です。患者さんの咳やくしゃみなどのしぶきに含まれる細菌によって感染する飛沫感染が主な感染経路です。飛沫が付着した物に手が接触し、その手を介して細菌を口、目、鼻などの粘膜から取り込むことで感染する接触感染で感染することもあります。家族間での感染率は20~60%もあるとされているので、お子さんが溶連菌と診断されたら、マスクをして飛沫を防ぐとともに、手洗い・うがいを徹底しましょう。
周囲の流行や症状から、溶連菌感染症が疑われる場合には、検査を行います。抗原検査と培養検査がありますが、最も一般的に使用されているのは抗原検査で、喉を綿棒で擦って検査をします。5〜10分程度で結果が出ます。
A群レンサ球菌はペニリシン系抗菌薬(アモキシシリン、サワシリン、ワイドシリン、パセトシンなど)が良く効きます。(ペニシリン系が効かない(=耐性)のものは今のところ確認されていません)。ペニシリンに対するアレルギーがある場合などは別の抗菌薬を使用しますのでご相談下さい。
咽頭炎の後しばらくしてからリウマチ熱という、心臓を含む全身の炎症が起こることが稀にあります。それを予防するために10日間しっかりと抗菌薬を飲み切ることが大事です。症状が良くなったからといって自己判断で抗菌薬を途中でやめないように注意しましょう。
有効な抗菌薬の投与が始まり、24時間程度たつと他人にはうつさなくなります。抗菌薬内服開始後24時間が経過し、解熱して元気であれば登園や登校が可能となります。
A群レンサ球菌に対するワクチンはありません。手洗いやうがい、マスクなどの一般的な感染対策で予防しましょう。
溶連菌感染後の急性糸球体腎炎の早期発見に尿検査は必ず必要ではありません。
溶連菌感染後の急性糸球体腎炎の発症は非常にまれです。また万が一発症してしまった場合には、「尿量が減る、尿の色が茶色い、手足や顔が浮腫む」などの明らかな症状が出ます。非常にまれな病気でかつ症状が分かりやすい病気に対して、ルーチンに尿検査をする必要はない、とされています。逆にそのような症状がある場合には必ず医療機関を受診して下さい。