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新型コロナワクチンについて vol 4|久が原ファミリークリニック|小児科・内科 |大田区久が原・池上

新型コロナワクチンについて vol 4

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vol 1では「新型コロナワクチンの基本的な知識」
vol 2では「日本で使用される予定のワクチン3種類の効果や、なぜこんなに早く開発・承認されたのか」
vol 3では「ワクチン接種による副反応、アナフィラキシー」について解説しました。

 

vol 4では「ワクチンに関して現段階でまだ分かっていないこと」について解説します。

 

 

長期的な効果は未確定

 

3種類のワクチンの治験における観察期間は 100~150 日という短期間であるため、それ以上の期間のワクチン効果については評価がまだできていません。

アメリカやイギリスなどの諸外国で日本より先行して接種が行われており、今後明らかになってくると思われます。

 

 

変異株についての効果

一般論として、ウイルスは絶えず変異をおこしていくもので、小さな変異でワクチンの効果がなくなるというわけではありません。

 

現在、イギリスの変異株が日本でも広がりつ つあります。この変異によって、感染力(伝播力)が 36%から 75%上昇すると推定されていますが、
ファイザーのワクチンの有効性には大きな影響はないとされています 。

 

一方、南アフリカの変異株とブラジルの変異株にみられる変異は、ワクチンの有効性に影響が出ることが懸念されています。
実際に、ファイザーのワクチン 2 回接種後に誘導される抗体の中和活性は、それらでは3.4 分の1に低下することが報告されています。

 

しかし、だからと言ってワクチンを接種しないという理由にはならないでしょう。今後、変異株に関する新たな情報も集まってくると思われます。

 

 

感染予防効果、他人にうつさなくなるか、は不明

「発症予防効果」や「重症化予防効果」は実証されていますが、「感染予防効果」は不明です。
それは、新型コロナウイルス感染症には無症候性感染が多いからです。
治験に参加した人全てに抗原検査やPCR検査を実施して感染の有無を確認することは残念ながら不可能です。

 

同時に、他人にうつさなくなるのかどうか、も不明です。

 

「発症を予防する」ということは、
・他人にもうつさないぐらいにウイルス増殖を阻止するのか
・他人にはうつしてしまうが自分は発症しない程度にウイルス増殖を阻止するのか

それは分かっていません。

 

 

集団免疫効果については不明

人口の一定割合以上の人が免疫を持つと、感染患者が出ても他の人に感染しにくくなります。
その結果、感染症が流行しなくなり間接的に免疫を持たない人も感染から守られます。この状態を集団免疫とます。

 

新型コロナワクチンによって、集団免疫の効果があるかどうかは分かっておらず、分かるまでには時間を要すると考えられています。

 

 

 超高齢者への接種について

3社のワクチンいずれの治験でも、年齢層ごとの有効性が評価されていますが、75歳以上では対象者数が十分でなく評価できていません 。
75 歳を超える高齢者での有効性については今後の検討課題と考えます。
しかし、高齢であるほど重症化リスクが高いことは明らかであり、日本でも接種も優先的に行われる方向で進んでいます。

 

海外で高齢者や基礎疾患のある方にも接種が進んでいる中で、現在のところ重篤な有害事象は問題になっていません。
感染して重症化するリスクに比べるとワクチンの副反応のリスクは小さいと考えますので、基本的には接種をお勧めします。

 

接種がご不安な方は体調を把握して下さっている主治医とよく相談しましょう。

 

 

妊娠中の女性、授乳中の女性への接種について

妊娠・妊活中、授乳中の方も新型コロナワクチンを受けることができます。

 

アメリカなどで妊娠中の方を対象とした臨床研究が進められていますが、まだ安全性に関するデーターが限られています。
ですが、mRNAワクチンは生ワクチンではないため、不妊・流産・死産・先天奇形のリスクを高めることはない、と考えられています。
実際、米国疾病予防管理センター(CDC)から、アメリカでは2月16日までにワクチン接種を受けた妊婦さんは3万人を超えており、
妊娠していない方と比べて大きな問題は出ていない、と発表されています。

 

なお、日本産婦人科感染症学会・産婦人科学会からは、
「感染リスクが高い医療従事者、重症化リスクである肥満や糖尿病など基礎疾患を合併している方は、ワクチン接種を考慮する」
と発表されています。接種については主治医とよく相談して決めましょう。

 

授乳に関しては、「ワクチンの母乳への影響はない」と考えられており、授乳中でも問題なく接種可能です。

 

 

 

小児への接種について

ファイザー社の新型コロナワクチンでは、治験が16歳以上で行われており、16歳以上が接種対象です。
アストラゼネカ社、モデルナ社の新型コロナワクチンでは、治験が18歳以上で行われており、18歳以上が接種対象です。

 

幸い、小児は発症リスクが低く、また重症化リスクはさらに低いことが分かっています。
また、小児から成人・高齢者への感染伝播リスクも低いのではないか、と言われています。
ですので、慌てて接種する理由は乏しいと考えられます。

 

ファイザー社、モデルナ社 の新型コロナワクチンでは12歳以上の小児を対象とした臨床試験が海外で開始されており、
将来的には、接種の対象年齢が広がる可能性もあります。

 

 

新型コロナウイルスに感染したことのある方への接種について

既にコロナウイルスに感染した人も、新型コロナワクチンを受けることができます。

 

ただし、接種まで一定の期間をおく必要がある場合がありますので、いつから接種できるか不明な場合は、主治医にご確認ください。
なお、事前に感染したかどうかを検査して確認する必要はありません。

 

(※)米国CDCからは以下のような見解が示されています。
・隔離を中止するための基準が満たされるまで延期する必要がある。
・新型コロナウイルス再感染のリスクは感染後の最初数か月では低く、免疫力の低下により時間とともに増加する可能性があることが示唆されていることから、
最近新型コロナウイルス感染症に罹患した人は、必要に応じてワクチン接種を一時的に遅らせることを選択できる。

 

 

vol 4は以上です。
今後も新しい情報が次々と出てくると思われますので、その都度お伝えしていく予定です。