マイコプラズマ肺炎|久が原ファミリークリニック|小児科・内科 |大田区久が原・池上
マイコプラズマ肺炎
Mycoplasma pneumonia
Mycoplasma pneumonia
マイコプラズマ肺炎は、「肺炎マイコプラズマ(Mycoplasma pneumoniae )」という細菌に感染することによって起こる呼吸器感染症です。小児や若い人の肺炎の原因として、比較的多いものの一つです。例年、患者として報告されるもののうち約80%は14歳以下ですが、成人の報告もみられます。マイコプラズマ肺炎は1年を通じてみられ、冬にやや増加する傾向があります。
多くの人はマイコプラズマに感染しても気管支炎程度で済み、軽い症状が続きますが、一部の人は肺炎となったり、重症化することもあります。
患者さんからの飛沫感染と接触感染が主な感染経路ですが、感染には濃厚接触が必要で感染拡大の速度は遅いと言われています。短時間の接触ではうつる可能性はあまり高くありません。友達同士や家族間での濃厚接触でうつることが多いとされています。しかし、潜伏期間が2~3週間と長いため、どこで感染したか分からない場合が多いです。
感染力は症状発現前2~8日から見られます。症状発現時から約1週間が一番感染力が強いとされています。その後徐々に弱まりますが、4~6週間以上は感染力があるとされています。感染により抗体ができますが、徐々に低下し再感染もよく見られます。抗体の保有期間は様々で正確には分かりません。
症状、周囲の流行状況、診察所見から肺炎を疑い、レントゲン検査で肺炎の有無を確認します。同時にマイコプラズマによる肺炎かどうかの検査を行うことになりますが、受診当日に正確に診断をつけるのが難しいのが現状です。
マイコプラズマ肺炎を診断する検査方法には、①培養法、②抗原検査法、③抗体検査法、④遺伝子検査法の4つがあります。
咽頭ぬぐい液や喀痰からマイコプラズマを分離する方法で、一番確実な方法です。しかし、結果が出るまでに早くても1 週間程度かかるため、通常の診断としては有用ではありません。
咽頭ぬぐい液で調べます。15分で結果が出るため簡便ですが、精度が非常に低く(正確には感度が非常に低く、偽陰性が非常に多い)参考程度にしかなりません。
血液検査で調べます。マイコプラズマに罹ると、マイコプラズマの抗体ができるので、この抗体を調べればマイコプラズマに罹ったかどうかということがわかります。正確な検査方法は、症状が現れ始めた頃(急性期)と、2週間後の2回採血して、抗体の上昇を見ます。4倍以上抗体が上昇していればマイコプラズマと診断できますが、診断に時間がかかります。
また、1回の採血で抗体価が320倍以上に上昇していた場合もマイコプラズマ肺炎と診断することもできますが、抗体価は感染後1週間程度から上昇し始め、2~6週間程度でピークに達するため、初回の採血では抗体価がそこまで上がっていないことが多く、診断を確定できることはあまり多くありません。
咽頭ぬぐい液で調べます。マイコプラズマの遺伝子検出検査法としては、PCR 法 、LAMP法というものがあります。LAMP法はマイコプラズマに特徴的なDNAを直接検出する高感度の遺伝子検査で、PCR法より簡便で迅速に(検査終了まで数時間程度)かつ同程度に非常に高い精度で診断ができるため、現在はLAMP法が用いられています。しかし、特別な機械を必要とするため診療所等のプライマリーケア施設では導入が難しく、検査会社に依頼すると結果が出るのに3日間ほどかかってしまいます。
上記の理由から、症状や周囲の流行状況からマイコプラズマ肺炎を疑いレントゲン検査を実施し、参考程度ですが抗原検査を実施した上で治療を開始することがほとんどです。
マイコプラズマに感染しても多くの人は軽い症状で済んでしまいます。ごく一部の方が肺炎になってしまうため、その際には抗生剤の治療が必要になります。
マイコプラズマ肺炎に効果のある抗生剤は大きく3種類あります。
この中でマクロライド系の抗生剤が1番最初に使うべきものとされていますが、近年の抗生剤の不適切使用や乱用により、マクロライド系に耐性(効かない)のマイコプラズマが半数ぐらいを占めるようになってしまっています。患者さんの症状の程度や年齢(8歳未満のお子さんにミノマイシンを使用すると歯牙を黄色く変色させ、永久歯に黄色い線が入るため使用できません)に合わせて抗生剤を選択する必要があります。
マイコプラズマは、学校保健安全法で「第三種学校伝染病」に指定されており、「急性期は出席停止、全身状態が良ければ登校可能」とされています。解熱して激しい咳の時期がすぎるまで(咳は1ヶ月ほど続くことが多いです)はお休みすると良いでしょう。ピークを過ぎても感染力があるため、マスクをして周囲に感染を拡げないように気をつけましょう。